10zineは今回で10回目&10周年!開催に合わせて、初期から運営に携わっている三迫太郎・松本千里さん、北島敬明さんの3人で10zineについてわいわい話してみました。後から見返したら運営サイド寄りの話になっていて、出展者のメンバーにも入ってもらえば良かった…と思いつつ、2022年の雰囲気の記録という感じで楽しんでもらえたらと思います。ではどうぞ!

10zineのはじまりをふりかえる

三)ではでは、10zineが10周年を迎えるにあたって、vol.2(2012年)から参加してくれてるお二人とお話をしていこうと思います。松本さんは現在は10zine全体の運営をやっていて、北島さんは佐賀会場のPERHAPS自体を運営していますよね。

vol.1の様子


北)ちなみに、vol.1(2011年)から今も継続的に参加してる人っているんですか?

三)多分僕しかいなくて…10zineは元々、福岡パルコがオープンした当時、パルコの営業をしていた園田貴博さんがデザイナーの平野由記さん(※当時福岡、現在は宮崎在住)に、「転勤で福岡に来たけど、ぜんぜん面白くない」みたいなことを言っていたらしくて。それに反応した平野さんが「福岡も面白い人、いっぱいいるから!」って、周りに声をかけた…みたいな感じで始まったんですよね。

当時はユトレヒトとか、東京のお店がzineを扱い始めていたり、ネットにもzineについての記事が上がり始めていた時期だったので、平野さんと共通の友人の三好剛平さんとも「zine作りたいよね」っていう話をしていて。でも各自でお店に置いたりとか、フリーペーパーみたいに配ったりするのは少し敷居が高いので、みんなで日程を決めて展示・販売するイベントをやろう、という流れでスタートしました。

名前を考える時にちょうど天神のカフェで集まってたのと、人数が大体10人ぐらいだったんですよね。それで、「10zine」はどうですか?って僕がスケッチブックに書いて見せて…なんか「平成」みたいな感じで(笑)。

10zineの名前が決まった日


北)僕はvol.1の時にムツロさん(※イラストレーターのムツロマサコさん)から誘われていたんですよ。ちょうどPERHAPSを始める前だったかな。だから全然余裕がなくて。vol.1をお客さんとして見に行ったんですけど、参加しなかったことをすごく後悔した記憶があるな。めっちゃ面白い!と思って。それがvol.1。でもvol.2があると聞いて、いざ参加するするとなるとビビってしまって…沖さん(※アーティストのOKI KENICHIさん)たちと、vol.2の顔合わせで大名で飲みました。それが最初ですね。

三)vol.1ではどういうところが面白いと思いましたか?

北)「zineは小冊子みたいなもの」と聞いていたけど、あんまりピンときてなかったんですよね。実際に見に行ったら形も様々だし、なんかとにかく…雰囲気がおしゃれだなと思って(笑)もちろん作品自体も面白かったですけど、有志で面白がって集まる人たちがこんなにいるのかと。集団で決まったことをやるのは気が進まない人もいるかもしれないけど、やりたい人だけが集まって、ポジティブしかないから。

そういうのが作品にも会場にも出ていて、来てるお客さんにもそういうのが伝わっているんだろうなっていう、ワクワク感みたいなのがあったかな。

三)最初に声をかけた人たちが、広告や、デザイン、写真をやっているクリエイターが多かったからというのもありますね。僕は周りのクリエイターの、「仕事」ではない「作品」を見たいなという気持ちが最初にあったんですよね。松本さんはvol.1は見に行きましたか?

松)行きました。4696-1616さんの分厚い無線綴じの本がずっと記憶に残っています。私が参加することになったのは確か、三迫さんが「学生メンバーが欲しい」と私の母校の先生に声をかけて、後輩たちと一緒に参加したのがきっかけですね。

私は三迫さんとは逆で、周りの人の作品は知ってるけど、仕事の実績は見たことがなくて。今の10zineメンバーは会社員が増えてきて、作品は知ってるけど普段何してるのかは分からない人が多いかもしれないですね。

「見えてない部分が見れるから面白い」っていうのは自分のおもしろポイントにはなかったから、人それぞれなんだなと思いました。「zineで何を見ようとしてるのか?」みたいなのが。

三)おお、なんかいい言葉ですね。


イベントを運営すること、zineを作ること

10zine vol.8(2020)の様子。人が多い!


松)継続して参加していると、学生の頃と今では考え方が違うし、ブレていたものが整ってきたなっていう感じがあります。

三)なるほど。それって仕事を通じて何かをまとめるテクニックみたいなものが確立されてきたということですかね?

松)そうですね。技術も上がりつつ、経験値が貯まって迷わなくなったというか。前回はこれをやって、ちょっと違ったから今回はこっちだ、みたいなのが決めやすくなってきましたね。面白い・面白くないとかより、言われるがままに参加してみて、ずっと続いてきたみたいな感じです。

三)そしていつの間にか運営してるっていう(笑)。松本さんは参加しなかった回ってなくないですか?

松)ないですよ。

北)すごいですね!

松)忙しさで作品が作れないということもなかったし、なんなら10zineの運営をやっている時のほうが仕事よりメールをたくさん回しているなと思います。取りまとめる役目も仕事ではしないけど、10zineではやるから、いい経験だなと思いながら。

北)そんなものをやりつつ、毎回ちゃんとzineを出してるから…。

三)確かに。しかも一つじゃなくて二つ出てきたりとかしますもんね!

松)そうですね。なんか出さなくなったら終わりな感じがありますよね。運営に徹してプレイヤーを離れることは、仕事で例えるとディレクターになることで。それって年齢が上がると自然と求められる立場だから、20代、30代のうちに作ることを手放すのはもったいないというか。10zineなら運営しながら作品を出すっていう。どっちも続けられるうちは続けたいなと思いますね。

三)利害関係が特にないからプレーヤーじゃないと楽しくないですよね。

松)そうなんです。北島さんが参加しなくなったのは、ネタがないからという感じですか?

北)そう。毎回出してる人をすごいなと思うのは、忙しいとか暇ということより、表現したいものがあるというところで。自分は最近そういうのが薄れてきているというか。ただ、今年10周年だから何か出したいなと思っていて、今興味があることってなんだろう?って考えると、子どものことなんですよね。でも子どものことをzineにしてもな〜って思ったらまた手がストップしちゃって…という感じです。表現したいものがあるってすごいなあと思っている次第です。


2つの会場、佐賀と福岡の違い

10zine vol.9(2021)佐賀会場


三)北島さんは佐賀会場を運営していて、佐賀メンバーから「北島さんは出されないんですか?」と言われないですか?

北)言われない。最初参加していた人たちも出さなくなって、新しい世代の人たちが参加するようになったから。昔は絵を書いたりしていたけど、その人たちは僕が出してたこと知らないんじゃないかな。

昔、イラストレーターのミロコマチコさんがアルバスで展示をしたときに、ミロコさんを発掘したというか、フォローしてる大阪のiTohenの鯵坂兼充さんがいらっしゃって。鯵坂さんも元々絵本作家になりたかったけど、iTohenを始めることになったそう。そういう制作とか表現から離れていった話を聞いて、なんだか自分と同じようなパターンだなあと思ったけど、鯵坂さんから「またいつでも筆は持てるから」と言われて救われたというか…ほっとしたんです。またそういう日が来るのかなあと思いながら、5年10年と経っている状態です。

三)人生長いですからね。年表でみたら筆をとってなかった時期の方が短いっていう可能性もありますし。

北)そうですそうです。空白の10年間みたいなことで。

三)いろんな作品を見てインプットする期間だった、ということもあるかもしれないです。

北)一度、ネタが思いつかなくて透明のフィルムを閉じて出したことがあって。それを300円ぐらいで出してみたら、買ってくれた人もいたけど平野さんから「なんでこんな安い値段をつけるんですか」「5000円とかだったら面白かったのに!」みたいな感じで言われましたね。

三)たしかに(笑)。

北)そうそう。恥ずかしいなと思って。

三)そうやって、出したzineを使って交流できるのが楽しいですよね。

僕は福岡と佐賀でちょっと集まってる人の雰囲気が違うなって思うんですけど、北島さんが佐賀会場を見ていて、何か感じることとかありますか?

北)佐賀会場を始めた時からそうだけど、作家寄りの人が多い。単純にフリーランスだったりデザイナーさんが少ないのかな?作家の卵というか…もの自体にすごくこだわっている人が多いなっていう印象はあります。今回フライヤーを作ったvaloちゃん(アーティスト)とかナルミちゃん(※グラフィックデザイナーのナルミニウムさん)が出てきたときに、ちょっと一瞬福岡の匂いがしたというか…。でもその子たちはもうその次以降、福岡の方に直に出すようになりましたね。佐賀会場で参加している中村美和子ちゃんというドローイングを書く子は「佐賀で出し続けたい」と言っていて。それはそれで面白いなと思います。


クリエイターの集まりから、ゆるいつながりへ

三)松本さんは、福岡も最初に感じていた「クリエイターの集まり」感は変わってきてる気がしません?

松)そうですね。最初集まってた方は、ピンで立てるデザイナーというか、プロが集まってる感じだったけど、多分SOMEWAREに会場を変えたぐらいから会社員の人(印刷関係とか、デザイン関係の人はいるけどそれを表に出さない人)が増えていて。あえて仕事と切り離そうとしてる人が多いですね。デザイナーとしてというより、会社とは違う自分を出すみたいな。

三)確かに僕もみんなと会って話したりするけど、普段どんな仕事してるかはよくわかってないかも。

松)年に1度しか集まらないけど、不思議とチームワークが成り立っていて。初期メンバーの方はその後も関係が続いてる方がいていいなと思うんですけど、今は学校みたいな感じで、人数は多いけど仲良くなる人は特定の人、みたいな。グループが分かれている感じがします。

三)vol.1とか2のときのみんなはフリーランスも多くて動きやすかったから「休みを取って台湾行こうぜ!」みたいなことができていましたね(※10zineは2012年に台湾で展示とワークショップを行いました)。会社員の人たちはそういう訳にもいかないから、10zineに参加して終わったら普段の仕事に戻る、みたいな。そんな感じもあるのかな。

松)instagramが流行り出して、イベントじゃないと繋がれないってこともなく、みんながフォローし合っていたらそれで繋がった気になれてるかもしれないですね。「飲み会で仲良くなろう」世代はもういないかもしれないです。

三)それぞれがゆるく繋がりやすくなってきたなと思います。

松)自分の活動を自分で発信できる時代になったので、とにかく出会いを求めて、誰かと一緒に何かやるみたいなのが無いかも。自分がやりたいことも明確に決まっていて…。

三)確かに昔はもっと、同業者との繋がりを求めて参加してくれる人はいた気がしますね。

松)過去の自分はどうして特に仲良くなりそうでもない人の集まりに行ってたんだろう?と思う時があります。でも、私がそう思ってるだけで、他のメンバーには繋がりを求めて、参加してる人もいるかもしれないです。

NEWGRAPHY(2021)サテライト会場


北)僕はお店をやってるので、10zineを佐賀でもやれないかなあっていう下心はありました。10zineに参加したのがきっかけで、沖さん、4696の野口さん、馬場さん(イラストレーターの馬場道友さん)とかがうちで展示をしてくれたこともあったし、デザイナーがイラストレーターを探してるとか、お客さんがデザイナーさんを探しているとかいうのも知れるので、いい場所だなと思います。

松)北島さんはお店が仕事だから、繋がりがあった方が良いんだろうなと思うけど、いま10zineに参加しているメンバーは会場で知り合っても仕事に結びつく訳でもなさそうですよね。友達でもないし不思議な繋がりというか。自分は「友達」という括りを明確に分けるタイプなので、友達・知り合い・クラスメイトみたいな感じで。でも、10zineはどこにも当てはまらない。

三)年に1回という頻度もいいのかもしれないですね。

北)来るもの拒まず、去るもの追わず、っていう感じはすごくいいな。僕は佐賀から参加して、すごく緊張してたんだけど、全然ウェルカムだし。学生時代は福岡の専門学校に行ってたんだけど、その時はすごい「佐賀人だ佐賀人だ!」って言われて佐賀人コンプレックスがすごかったから(笑)。そのゆるさはいいなと思う。

三)確かに、参加した人たちが集まって「そういえばあいつ来てないよね」みたいなこと言ったりすることは全くないですね。

松)人のこと気にしてないのはいいですよね。作ってることが偉いとか、出さないとやる気がないみたいな見方する人もいないし。干渉しすぎないのがいい。

北)太郎さんが言った1年に1回っていうのが、そういう関係性を作ってるんじゃないかな。

三)あと、作る専門の人とそうじゃない人が混ざってるからパワーバランスが生まれにくくて、作品に優劣がついたりとか、「こういうのはzineじゃない」みたいにならないのは良いですよね。

松)私は10zineに参加し続けて、以前より他人を認められるようになった気がしますね。こういう人も、ああいう作品もありだな、という感じで。自分は積極的に人と交流するタイプじゃないから、10zineを運営しながらいろんな人とコミュニケーションをとっていろいろ許せるようになったというか。

北)出展者に制限もないじゃないですか。zineも絶対綴じてなきゃいけないとか制限がないし、何ページでも、どんな形態でもいいっていう。自由度の高さがいい。

三)前回も小学生のサイモンくん(※小学生映像クリエイター)が参加してくれてましたしね。

松)自由だと迷う人もいると思うんですけど、形になるとやっぱりその人らしいものが仕上がってくるなと思います。

北)僕は一応デザインの仕事をしているので、全然デザイン畑でも何でもない人が、すごい上手なものとかを出してきたときにすごく落ち込むんですよ。デザイナーって資格も別にないから、デザイナーって何なんだ?みたいな…

三)僕もです(笑)。もはや逆に快感ですね。

松)誰もが一度は考えてしまう(笑)。でも、コミュニケーションとか進行とか全部含めての仕事だから、いくら面白いグラフィックが作れてもその土地に合わなかったりしたら、長続きできないから。

北)わかって…るんですよ…。

三)しまった、仕事でデザインに関わってる3人で集まってしまったから、話が偏ってる!そうじゃないポジションの人も呼べばよかったですね(笑)。


3人で合作した10周年フライヤー

三)10zineは世代がどんどん新陳代謝というか、若返っていくから、いつものメンバーで予定調和な感じにならないっていうか変化が楽しいですね。


北)それこそ今回のフライヤーは意外だなと思って。10周年ということで、立ち上げから関わった太郎さんから今までの10zineっぽいビジュアルが上がってくるのかなと思っていたら、真逆を行ったというか。さっき太郎さんが言ってた「その時その時の世代の色」がこういうことなんですよね。

松)世代で言うと、ちょうど20代(valoさん)、30代(なかむらみさきさん)、40代(太郎さん)の3人で作っていますよね。

三)アートワークを作ってくれたvaloさん曰く、セレモニー感とおめでとうを表現した作品らしいですよ。他の二人は自分がやってきた商業デザインの仕事とは違うフィールドで活動していて、すごく面白い人たちで。こういう機会がないとなかなか絡めないので楽しかったです。楽しすぎて絵をもらって小一時間ぐらいでバーッとデザインを作っちゃいました。

北)そうなんですね。このコピーは?

三)テキストはなかむらみさきさんですね。

松)言葉のチョイスが中村さん流って感じで、これを「要するに」みたいな感じで普通の言葉にしちゃうと、伝えるのが難しくて。

三)いい具合に「これまで」を僕が担当して、「今」と「これから」の部分は2人が捉えてるものを反映出来たかなと思っています。


これからの10zineのこと


三)個人的にはこれからも作品発表の場所として10zineが続いて、興味を持ってくれる人が入れ変わり続けるのを維持できればいいなと思っています。運営は松本さんがしてくれてるし、僕が何かを決めるという感じではないですけど。

松)継続するのは得意ですが、行動力を伴うようなことはあまりやれてないですね。とりあえず私はこれを保つためにやっている感じです。

北)台湾に行ったりとか浜松に行ったりした時(ともに2012年)は、ちょうどzine自体のブームと重なってたから。

三)そうですね。雑誌の「装苑」のzine特集で取材してもらったりとか。

北)ブームが落ち着いて、外との交流がなくなるのは自然の流れなのかな。これが淡々と10年20年30年続いた時に、また次にブームが起きたらいいですね。

装苑(2012年7月号)「アジアのZINEの担い手たち」


松)30年続いたらすごいですね。

三)コミケみたいに、何十年も続いてるけどそれ自体は権威ではない…みたいな、場所として楽しいのがいいでしょうね。権威的に固まってしまうと面白くないから。

松)長い長い目で見て、続けられるのはいいことだと思いますね。ブームが来てすぐ鎮火するみたいなのはあんまり好きじゃないから。自分自身を飽きさせないための工夫が長続きの秘訣と言うか。その辺は表には見えなくていいですけどね。

三)仕事でやってる活動じゃないですもんね。それを聞いて松本さんの感覚が今の10zineには出てるんだなっていうことがわかりました。ありがとうございます。

(編集・三迫太郎/文字起こし・福田奈実)